闘魂外来&祭 in 柏崎が開かれました
整形外科部長 津吉秀樹
6月17日(日)、柏崎総合医療センターで初めての「闘魂外来・闘魂祭」が開かれました。
闘魂の外来?祭?なんじゃそりゃ?…って人が大半だと思います。主役は全国から公募して集まった医学部の学生たち。そこに研修医、指導医がついてチームを組んで、救急外来でその日に来院した実際の患者を(患者の承諾を得て)何人か時間の許す限り診察、治療する。そこまでが闘魂外来。そして昼食と休憩をはさんで振り返り。診察した患者から各チームが1人づつ選んでカンファレンス。それをチーム毎にリング上のバトル形式で行うのが闘魂祭、という企画です。
闘魂指導医のカリスマ、プロ4人が参加してます。
朝の集合とチームビルディング。診察の流れの打ち合わせ。
9時前後から始まっていたけど、私は11時くらいに病院に様子見に行きました。内科外来に医学生、研修医、指導医、外部講師も集まって大勢でなんだか賑やかです。学生3〜4人に研修医、指導医各1名で1チーム。それがA、B、C、3チームで診察室を3つ使って実際の診察をしています。
内科系の患者だけ選んでやってるかと思ったら、Aチームは転んでぶつけた肘が変形して動かせず痛がっているという整形外科分野の患者を診察中。見学のつもりが到着早々当事者になってしまった。レントゲン、肘の脱臼でした。※
担当した医学生と一緒に脱臼を整復、シーネ、三角巾。脱臼の診断、治療のプロセス、脱臼の整復について、シーネ(添え木)の作り方について、三角巾の作り方について、教えながら処置を進めて診療を完了。
闘魂“外来”のあと、昼食をはさんで午後から今度は闘魂“祭”です。
総務課の人たちが前日遅くまで残業して準備した祭会場にはリングと花道、ホワイトボード、オーダリング端末、プロジェクター、リングを囲む椅子。テーブルにはでっかいゴングが(笑)。13時半から16時まで、外部講師を交えたA、B、C、3チームの熱いカンファレンスバトルを観戦させてもらいました。
まずCチーム。
高齢者の意識障害のケース提示です。詳細に聴取した病状の経過から、全身くまなく取った身体所見、検査データをプレゼンテーション。
そこから病態の推理、考察に入っていきます。そして他チームの学生、研修医、そして講師からの質問やツッコミ、チャチャ、イジリ(笑)が入りまくり、アカデミックな?「祭」が進行していきます。私も勉強になりました。
次、Aチームは…
なんと私が一緒に診察した肘脱臼症例を提示。学生は自分たちなりの知識と診察中に学んだことを他のチームにプレゼンしてます。講師、他チームに突っ込まれながら、脱臼の受傷の経緯、神経血管損傷の有無もチェックしたことなども加えて詳しく解説してました。
私も途中からリングに登って、肘脱臼の診断、治療についてレクチャーしました。仕込みなしの飛び入り講師です(笑)病態から振り返れば受傷機転の推測もできること、脱臼は整復すれば終わりじゃなくて靭帯損傷の評価も大事なこと、などの解説もさせてもらい…「見てるだけ」のつもりがフタを開けたら完全当事者でした
学生からは「転倒して肘を脱臼するような受傷なら頭部外傷の有無もチェックすべきでしょうか?」という…いい意味でちょっと斜め上からの鋭い質問、提言も飛んできました。
最後のBチーム。
提示は腹痛&下血の症例でした。学生の1人は自らの腹を出して痛い場所を実演。
11人の医学生…新潟大、信州大、金沢大、東大、東北大、東海大、奈良県立医大から集まった11人の闘士たちのバトルは見応えありました。学ぶことに貪欲で、楽しく学ぶ術を知ってる。そして5人の研修医。基本教わる側であることが多いであろう彼らですが、この「祭」では学生をサポートする「教える側」です。上越総合病院と糸魚川総合病院から参集した5人の戦士は頼もしく見えました。
そして私にとって今回の最大の「学び」は闘魂祭の要となった4人の講師です。学生の勢いにまったく引けを取らないノリの良さ。各チームのプレゼンにツッコミを入れ、たまにボケる。アドリブ対応能力半端ない。学生が興味を持ち自分で考えて情報を整理して診断し、答えに近づくよう導く上手さ、巧さに脱帽でした。
学生に学んだのは初心に返ること。講師に学んだのは教える情熱。学生と研修医の元気をもらい、講師の勢いに驚き、楽しく、そして得るものの多い「闘魂外来・闘魂祭」でした。
※肘脱臼のレントゲンのブログ掲載は患者さんご本人から了承を得ました。