前院長 藤原正博のコラム

前院長 藤原正博が在任中に書いたコラムを掲載しております。

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血液型の話

 皆さんは自分の血液型をご存知ですか? そう、あのAとかBとかOとかABとかいうやつです。

 血液型は輸血の場合に問題となります。初めての人から人への輸血は1827年に行なわれたそうですが、当然のことながらほとんどうまくいきませんでした。今考えてみると、うまくいかなかった理由はABO型の不適合輸血のためと思われます。1900年になってランドシュタイナーがA、B、Oの三つの血液型を発見、さらに1902年にカステロがAB型を発見し、以後急速に輸血医療が進歩していきました。現在では事故や手術時の大量出血の場合や血液疾患の治療において、輸血は必要不可欠のものとなっています。
 血液型というのは赤血球表面の抗原を意味するのですが、実はこの抗原には数百種類もあることがわかっています。その中で皆さんに比較的馴染みがあるのはABOとRhでしょうか。他にもMNSとかLewisとかKiddとか、様々です。
実際に輸血のときに問題となる血液型はABO型とRh型です。A型の人にはA型の血液を、B型の人にはB型の血液を、といった具合に同型血を輸血するのが原則ですが、どうしても準備が間に合わない超緊急事態の場合は、A、B、AB型の人にO型の血液を輸血することがあります。
Rh型はD抗原が陽性か陰性かによってRh(+)とRh(-)に分けられます。日本人のほとんど(99.5%)はRh(+)です。Rh(+)の人はRh(+)あるいはRh(-)いずれの輸血もOKですが、Rh(-)の人はRh(-)の輸血が必要です。Rh(-)の人は少ないので、自分のため、他人のためということで、登録制度があります。
現在の輸血は献血者の善意に基づいています。昔のような売血制度はありません。もしまだ一度も献血をしたことのない方あるいは自分の血液型をご存知ない方は、どうです? 献血をしてみませんか?

ABOの血液型についてもう少し。
日本人はA型、O型、B型、AB型の割合が4 : 3 : 2 : 1となっていますが、この比率は国によって違います。米国白人はO型が一番多くて45%、次いでA型41%、B型10%、AB型4%という順番です。メキシコはO型が84%と大多数を占め、A型11%、B型4%、AB型1%です。インドはB型が40%で最多、O型31%、A型21%、AB型8%となっています。アフリカのギニアはO型64%、A型とB型がそれぞれ17%ずつ、AB型は2%です。
なぜこのような偏りがあるのでしょうか。実は人類は最初は全てO型だったのだそうです。紀元前2.5~1.5万年頃、アジア大陸に分散して農耕民族となったグループの腸内細菌が変化、その腸内細菌が持っていたA型物質の遺伝子移入によりA型人間が誕生、一方紀元前1万年頃、ヒマラヤ山岳地帯に移動して遊牧民族となったグループでは、食料としていた乳製品を分解するのに適したように腸内細菌が変化し、そのB型物質の遺伝子移入によりB型人間が誕生したと考えられています。そしてA型人間とB型人間との混血によりAB型人間が誕生したのです。さらに感染症などの影響で地域差が生じたようです。
因みに血液型物質はヒト以外にも存在し、オランウータンやチンパンジーはヒトと同様四つの血液型を持っています。ニホンザルはO型とB型のみ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマはO、A、Bの三つ、ブタはOとA、クジラはB型のみです。

ABOの血液型は昔から性格と関連付けて語られます。たとえば
  A型: 安定志向、内気、取り越し苦労、几帳面、神経質、慎重
  O型: おおらか、意志が強い、大雑把、自己主張が強い、社交的
  B型: 好奇心旺盛、気楽、積極的、自由奔放
  AB型: マイペース、二重人格、内向的、矛盾があって判断しにくい
といった具合です。どうです? 当てはまりますか? 全ての人間を四つに類型化することなど所詮無理だとは思いますが、言われてみるとなんとなくそうかなとも思いますよね。

 最後に有名なスポーツ選手の血液型をご紹介しておきましょう。ロンドンオリンピックで金メダルが期待されている陸上競技ハンマー投げの室伏広治選手はA型、競泳の北島康介選手はB型、入江陵介選手はA型、レスリングの吉田沙保里選手はO型、卓球の福原 愛選手はB型だそうです。頑張れ、ニッポン! また米国大リーグで活躍しているイチロー選手はB型、松井秀喜選手はO型です。
(平成24年5月28日)